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中川隆司写真展
「On The Road」


中川隆司写真
会 期 / 2009年9月2日(水)〜10月17日(土)
時 間 / 11:00〜19:00
休 廊 / 日・月・祝
入場料 / 無料







©Takashi Nakagawa

中川隆司×中川五郎対談

写真展に合わせて、中川隆司と中川五郎の対談を行います。
ミュージシャン・作家・翻訳家として活躍中であり、アメリカ文化に精通している中川五郎氏を対談のパートナーにお迎えし、撮影秘話などたっぷりと語って頂きます。

日 時 / 2009年9月25日(金) 19:00〜(当日は18:00閉廊)
参加費 / 2,000円
mailにて要予約。
お名前・ご住所・お電話番号を明記のうえ、送信して下さい。
*スタッフより予約確認のmailを送らせて頂きます。

終了致しました。たくさんのご参加ありがとうございました。

*お客様の個人情報を漏洩・流出させたり不正に利用したりしないよう、厳正な管理を実施しております。

内容紹介


gallery bauhaus第16回の企画展は、写真家・中川隆司の作品展です。
8×10のカメラを肩に、独りアメリカ南西部を踏破、5年間かけて撮影した作品。
ネヴァダの果てしなく続く砂漠の中のハイウェイ、カリフォルニアの海辺で暮らす人々など、8×10の限りなく精緻な描写力が、人の目を超えた別世界を見せてくれます。
8×10大型カメラと路上(On The Road)にこだわって創り上げたモノクローム作品(ゼラチン・シルバー・プリントにトーニング)、約40点を展示。

       路上にて
                                                                                                             中川隆司

仕事では何回も行っていたアメリカだったが、1999年に突然1人で8×10カメラを持ってふらりと旅に出た。そのときは10日間ほどかけて、アリゾナ、ニューメキシコを旅しながら写真を撮影した。
このとき、僕は初めて完全な一人旅を経験した。それは、誰にも気を遣わず、誰の指示も受けず、思うままに自分を解放できる旅だった。その旅で弾けた何かは、帰国後、僕の中で増殖し始めた。
それからというもの、僕は資金を貯めては年に2回ほど、撮影のために渡米を重ねることになる。これといって目指すものはなかったが、大きなカメラを持って撮影行をする楽しさだけで十分だった。
しかし回を重ねるごとに、自分の中にある考えが生まれ始めていた。南西部に限っても、アメリカはふらっと旅をするには広大すぎる。そのためには効率を考え、州ごとに分けて撮影するのがベストである。日常の依頼仕事をこなし、その合間をぬっての撮影旅行にはこの方法しか選択肢はなかった。持っていくものはカメラとレンズ、そしてたっぷりのフィルムと現像キット。
なぜ現像を現地で? 8×10フィルムの場合、普通多くても1日の撮影は10枚くらいが限度だろう。ところが、僕の1日の撮影最高記録は80枚である。同じ場所で2枚撮影することは殆どないが、それでも10日間で数百枚になる。
1回目のアリゾナ撮影の際、未現像のフィルムを機内に持ち込もうとしてトラブルが起きた。そのときは、埒のあかない交渉に業を煮やした屈強な警備員に囲まれ、パイロットのところまで連行された。「パイロットに任せる」つまり彼らは匙を投げたのである。パイロットも困っただろう。最後に写真家である証明書を見せろということになり、カメラ・メーカーのプロカードの力を借り、無事搭乗できたのだ。
別のときは、帰国する際に空港で未現像フィルムのチェックでもめた。そのときの「開けろ」「開けられない」は、日本の航空会社職員に助けられて事なきを得た。いずれにせよ、その膨大なフィルムは空港警備職員でなくとも中を確認したくなるだろう。そんなこともあり、僕はフィルムを現地で現像するしかないことを悟った。現像所に頼む手もあるが、費用を計算すると不可能に思えた。
だから僕のスーツケースは、現像バット、薬品、手作りの乾燥ハンガー、ドライヤー、メスカップ、ホルダーなどで一杯だ。衣類はその隙間に申し訳程度に詰め込む。カメラが大きいと、暗室道具に至るまですべて最大サイズになるのである。
さて、アメリカに到着しレンタカーを借りたら、まずやることがある。後部座席で簡易暗室を組み立て、フィルムをホルダーに装填するのである。これにたっぷりと1時間はかかる。レンタカー会社の職員の怪訝な顔を幾度も見ながら、手を暗闇で忙しなく動かしつづけるのである。傍から見たらさぞかし異様な光景だろう。しかし、ここでフィルムを詰めておかないと、フィルム交換のできる場所はそうそうないのだ。
そして、後部座席には常に三脚がついたカメラが寝かされている。ひとりの撮影行は忙しい。運転、地図読み、食事(もちろん運転しながら)、撮影地探し。撮影したいときにカメラを組み立てるなんて、そんな事をしている時間はとてもない。撮影場所を見つけたら、安全な場所に車を停車させ、カメラを肩に担ぎ、手にホルダーの入ったトートを持ち、首から露出計とルーペを下げて仕事にかかる。そうやって、8×10大型カメラと路上(On The Road)にこだわりながら、僕は撮影を続けてきた。
それだけで終わればいいが、夜には夜の仕事が待っている。モーテルを探してチェックインすると、すぐに暗室設営にかかる。その日に撮影したフィルムはその日に現像しないと、次の予定に支障をきたすのである。バスルームがあればいいが、なければベッドの陰でひたすらシートフィルムをシャッフルする。そして、自作のフィルム・ハンガーにフィルムを吊るすとほぼ意識がなくなり、朝を迎えるのである。
なぜこんな馬鹿げた旅を続けてきたのか? 答えを突きつめてゆけば――やればわかる――理由はそれだけだ。
ハードな旅ではあったが、そこには経験したものだけが味わうことのできる特別な喜びや感動があった。そしてそれは、僕の新たな作品世界への喫水線であったかもしれない。

作家プロフィール


中川隆司(ナカガワタカシ) 1959年 岡山県生まれ。

1982  東京造形大学映像学科卒
1984  広告制作スタジオ勤務の後、フリーの写真家として独立。
        広告、エディトリアルなどの分野で仕事する。

主な展覧会


1991  「put them side by side」 東京デザイナーズスペース
1993  「BMX Free Style digital and analog photography」 スタジオエビスフォトギャラリー
2003  「N・Y・O」 ギャラリーロケット
2006  「Border Line Arizona Nevada」 銀座ニコンサロン
        「Border Line California New Mexico」 ギャラリーローカス
2009  「On The Road」 gallery bauhaus
2010  「The Collection II」 出展 gallery bauhaus